WBC総括

diary sports

少し時間を置いて総括というか、僕が感じだことを記してみる。こういったものは試合終了後、すぐに書くのが記憶も確かだし、リアルタイムな即効性も発揮しいいのだが、フットワークが重くなり、今頃書いている。

大谷が予選リーグでもMVP、そして決勝ラウンドでもMVPを獲り、まさに野球のスーパースターここにありという一幕で終わった。確かにいろんな数字を見比べてみても大谷の活躍は素晴らしく、起死回生の一打を放った吉田も僕の中ではMVP候補であったが、僕の考える本当のMVPは栗山監督だったと思う。

絶不調の四番、村上を使い続け、選手では最年長の役割を果たしたダルビッシュであったが、登板内容を見ると、日本のピッチャー陣で最も被本塁打を浴びるワースト1位の防御率であった。毎回、これでもかとホームランを打たれる姿を見ていると、やはり球にキレがなく、他選手をカバーするあまり自分自身の仕上がりが未完成であったと思う。そして、選手の要望を汲み取り、決勝で投げたダルビッシュ、大谷は志願でも登板であったし、小指骨折の源田も本人の意思を尊重した選手起用であった。こんな采配を行える監督は栗山監督以外ないとマジに思った。

予選リーグの村上は打率1割、ヒット2本という有様で、四番で使い続ける理由が分からなかった。村上に変わる選手はいくらでもいて、山川であったり、岡本であったりする。共にセ・パ両リーグを代表するホームランバッターだ。それでも四番に居座らせたとこに栗山監督の胆力がある。自分なら六番以降に間違いなく繰り下げている。「まだ、お前はその器でないな」と。それでも予選リーグでは四番に居座らせ、開花を黙々と待った。確率論的にセ・リーグ三冠王の村上だからそのうち結果が出ることはわ分かっていたが、その開花を準決勝、決勝で開花させたのは間違いなく栗山采配である。決勝ラウンドから五番に降格させたとこも先見の目があるし、四番吉田の存在感からプレッシャーから多少解放させ楽に打たせる気配りも感じた。準決勝ではサヨナラの場面で吉田から脚の速い周東に変え、一発逆転を狙う栗山采配、それに湿った村上のバットがようやく火を放ち、センターフェンス直撃となる逆転サヨナラ2塁打となった。試合後、村上が「今日は僕が決めましたけど・・」というインタビューに腹が立った。お前が決めたのではない、我慢して使い続けた栗山監督の温情があったし、最後のランナーを時速33km/hで駆け抜けた周東というピンチランナーがいたお陰だろ?貴様何様だ?と怒りが露わになった。お前が1塁ランナーで余裕で帰って来れるのか?と逆に質問もしたくなる。まぁ、村上はまだ若くガキであることはしょうがないし、その経験からさらに日本野球を牽引するバッターになればいいが。

そして毎回、被本塁打ピッチャーダルビッシュをアメリカの大一番で登板させるとこも、薄氷の氷を渡る雰囲気で見守ることになる。火だるまダルビッシュと予見できていたから、なんとかソロホームランで1点の失点で終わったが、そのシーンではだから言わんこっちゃないと独り言を呟いたのは否定しない。

準決勝メキシコ戦で最終回、大谷が2塁打を放ち、ベース上で「カモーン」と闘志をむき出しにする大谷を初めて見た。いつも穏便な大谷であったが、あの瞬間だけは鋭利な目がBUCK-TICKの櫻井のような目に映った。その闘争心が吉田の四球、村上のサヨナラ打に繋がった。

予選リーグでは快進撃であったヌートーバーも決勝リーグではまともな投手陣に凡打を繰り返し、得意のペッパーミルパフォーマンスも見なくなった。進塁していない以上パフォーマンスが出来ない。それでも決勝まで一番で使い続け、決勝戦では犠打となる打点1を稼ぐことになったのも栗山采配であろう。

よくよく考えると、メジャーリーグ最強のバッターとメジャーリーグ最強に近いピッチャーが今回は日本のベンチにいたことが分かる。ボンズとノーランライアンが、同一化し日本サイドにいる感じに近い。大谷は野球界のユニコーンだとアメリカの監督が評していたが、それこそ100年はこの逸材が出てくることはないだろう。100年、200年後、今のベーブルースに大谷が特集されるように、この大谷と未来の超二刀流選手が特集されよう。

余談で、大谷のスライダーをピッチングマシーンで再現し、現役上がりの糸井と内川が挑戦する番組があった。共に曲がってくるスライダーと分かっていても空振り三振でかすりもしない。さすがのトラウトも160kmを超える速球とスライダーを同時に待ち、バットに当てることはできなかった。佐々木が毎回ストレート160kmを出していたが、大谷も1イニング全力投球なら出来るのだと、球速は落ちていないことが分かった。

栗山の人柄、采配に大谷を始め本当に凄い野球選手を集め、頂点に輝いた。無骨で「サイコー」しか発言しない岡本が「野球ってこんなに面白いんだ」という帰国後のコメントは微笑ましかった。日本の投手陣が他国を圧倒していたことも勝因の一つで、どの投手もキレ、持ち味、変化球があり、毎回全力投球する日本のピッチャーを攻略することは難しい。チェコ戦ではスポーツマンシップも世界に流布され、野球というゲームの素晴らしさが日本を始め世界に発信された国際大会であった。また、3年後。今度はチケット買って生で観る。

P.S.

大谷がセフティーバント、雄叫びと普段では目にしないパフォーマンスをしたのは、飽くなき勝ちへの執念でもある部分が露出したのだと思う。万年Bクラスのエンゼルスではポストシーズンもなく、終盤ではほとんど消化試合。自分の成績結果のみの試合運びではやはり、みんなで勝つことが大きい野球での最高の喜びを感じることが出来ない裏返しの行動であると思う。そのフラストレーションの発散と目標達成(WBC優勝、MVP)が歓喜に包まれ大谷を動かした(涙)のだと思う。この優勝でアジアの野球の発展、そして野球が面白いと思ってくれる人が増えるのが大きな喜びと語るとこに、アスリートとしてではなく、その人間性に感化され、世界中の人々を虜にした大谷。そういった人間性が大きく運を導いているといってもいいであろう。あの勇姿を見て、僕も野球選手になろうと思った子供たちが何人世界にいたのであろう?人々に夢を与える仕事でもあるな、プロ野球選手は。ミュージシャンと同様に。