色彩を持たない、多崎つくると彼の巡礼の年
村上春樹の小説を読みたくなり、本棚にあったこの本を読んでみた。発行年は2013年であり、本棚で11年の歳月を迎えていた。
村上春樹節はある意味、麻薬で、その文章からあらゆる想像がその人の頭の中で出来上がってしまう。そういった、読者の頭の中で想像させる力が作家本来の力量であろう。
必ず、性の描写があり、それが艶かしく、どうして今なんだ?といった疑問も時々、村上春樹にはある。その独特の性描写含め、村上春樹ワールドが展開され、これからどうなるんだ?といった知的好奇心を味わえるのも彼の著書の特性でもある。結局2日と少しで完読できたが、突然、幕を下ろされる最後の展開に唖然としているのが正直な感想でもある。
小説の中を2日間彷徨いこんだ。その時の心情を語彙、言葉から想像でき物語を駆け抜けた面白さはある。また、主人公を通じ、その人間の内生を考えることもでき、読んでいない自分よりも遥に人間的成長はあったであろう。そういった感情が理解できただけでも、読書とは人を成長させる。
そういった感覚を全く持ち合わせなく死んでいく人間も多いであろう。そういった感覚を持ち合わせていた方が人生に彩りを与えることは明白ではあるが、だからそれが万人には当てはまらないのも事実であろう。
現実からの一瞬の逃避、そして非現実な思考パターン。それが小説にはできる。